この記事でわかること
- 生成AIが定着しない5つの理由と、自社の当てはまりの見分け方が分かります。
- 研修の前に業務と目標を決める、立て直しの5ステップが分かります。
- 使っている人の数ではなく、業務の変化で定着を確かめる方法が分かります。
アカウントは配った。研修もした。それなのに、使っているのは一部の人だけ。そんな状態になっていませんか。生成AIが社内で定着しない主な理由は、社員のやる気やツールの性能よりも、「何の業務に使うか」と「何を目標にするか」が決まらないまま、アカウントの配布や研修が先に進んでしまうことにあります。立て直すには、まず誰がどの業務で使っているかを確かめ、試す業務を1〜3つに絞って目標を置き、使ってよい範囲と使い方の型をそろえてから、その業務に合わせた研修と振り返りを続けます。
立て直しは、次の5ステップで進めます。
- 今の使われ方を確かめる(誰が、どの業務で、どのくらい)
- 試す業務を1〜3つに絞り、目標を決める
- 使ってよい範囲と、使い方の型をそろえる
- その業務に合わせて、現場で一緒に練習する(研修はここ)
- 推進役と相談先を決め、月1回振り返る
この記事でわかることは、次の3点です。
- 生成AIが定着しない5つの理由と、自社の当てはまりの見分け方
- 研修の前に業務と目標を決める、立て直しの5ステップ
- 使っている人の数ではなく、業務の変化で定着を確かめる方法
この記事の数字は、総務省やIPA、中小企業基盤整備機構などの公的資料で確認したものです。情報確認日は2026年11月5日です。
01
生成AIが「定着しない」とはどんな状態か
「導入した」と「仕事で使われている」は違う
AIを導入したことと、仕事で使われていることは、同じではありません。定着していない会社には、次のような状態がよく見られます。
- 使う人が一部に限られている
- 使っていても、文章の手直しや調べものなど、個人の作業で止まっている
- 業務の手順そのものは、導入前と変わっていない
この記事では、定着を「決めた業務で、決めた人が、毎回AIを使う手順になっている状態」と考えます。これは公的に決まった定義ではなく、当サイトの定義です。アカウントの数や、ログインした人の数ではなく、業務の手順にAIが組み込まれているかどうかで見ます。
公的な調査で見る現状
まず、ほかの会社の状況を公的な調査で見てみます。総務省の「令和8年版 情報通信白書」によると、日本の企業で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は86.4%でした[1]。多くの会社が、すでに何らかの形で生成AIに触れています。
一方で、生成AIによる業務変革などの組織的な取組について「組織的な取り組みはない」と回答した割合は、日本全体で27.0%でした[2]。これを企業規模別に見ると、大企業は18.1%、中小企業は45.6%で、中小企業で特に高い傾向があります[2]。この調査は、2026年1〜2月に行われたインターネット調査で、対象は従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取組を始めた企業の管理職以上です。日本の有効回答は515社(大企業353社、中小企業162社)です[3]。
さらに、いちばん多く使われている「議事録・メール作成補助」でも、活用のしかたには差があります。白書では、この業務で「従業員が個人作業の効率化で活用している」が35.2%、「業務プロセスがAI中心に変更されている」は11.3%でした[1]。使ってはいるものの、仕事の流れそのものは変わっていない会社が多い、と当サイトでは読んでいます。

相談の現場でも多いのが「使われない」悩み
こうした「使ってはいるが広がらない」状態は、当サイトを運営するチームが受けている相談でも、よく話題になります。
2026年に初回の打ち合わせまで進んだ法人研修のご相談24件を見直すと、そのうち11件が、「導入したAIが使われない」か「人によって使い方に差がある」ことを悩みに挙げていました。割合でいえば半数近くです。すでに会社でAIを導入しているのに使われていない、というご相談も、24件のうち9件ありました。件数が少ないため、傾向の参考としてご覧ください。ご相談のなかには、「会社で契約したAIのアカウントは配ったが、ほとんどの社員が使っていない。社内のルールも追いついていない」という声もありました。
運営チームが行ったAI活用の無料診断(2026年8〜10月の回答49件)でも、社内のAI利用状況として「一部の社員が個人的に使っている」を選んだ回答が31件あり、6割強にあたりました。
まず直すべきは、自社がどの理由で止まっているかを見分けることです。次の章で、5つの理由を見ていきます。
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生成AIが社内で定着しない5つの理由
原因はひとつではありませんが、多くは「順番」の問題です。使う業務と目標を決める前に、配布や研修を進めてしまうと、どれだけ良いAIでも使われにくくなります。まずは、自社がどの理由に当てはまるかを見分けます。次の表で、5つの理由と、当てはまるサインを確かめてください。
| # | 理由 | 当てはまるサイン | 対応するステップ |
|---|---|---|---|
| 1 | 何の業務に使うかが決まっていない | 「自由に使ってください」で配った。使い道を聞かれても答えられない | ステップ1・2 |
| 2 | 目標と、経営からのメッセージがない | 何をどれだけ減らしたいかが決まっていない。経営層が使い方や期待を話していない | ステップ2 |
| 3 | 使ってよい範囲が分からず、怖くて使えない | 何を入れてよいか決まっていない。社員が会社の外のAIを個人で使っている | ステップ3 |
| 4 | 研修が「使い方の説明」で終わっている | 一般的な操作の研修を一度やって終わり。自分の業務での使い方を練習していない | ステップ4 |
| 5 | 聞ける人と、続ける仕組みがない | 推進役が決まっていない。使える人と使えない人の差が開いたまま | ステップ5 |
3つ以上当てはまる場合は、研修のやり直しより先に、ステップ1・2から始めることを当サイトはおすすめします。
理由1:何の業務に使うかが決まっていない
「自由に使ってください」とだけ伝えてアカウントを配ると、多くの社員は、何に使えばよいか分からないまま止まります。使い道が人任せになり、一部の詳しい人だけが使う状態になりがちです。
中小企業基盤整備機構の実態調査でも、AIを導入した後の運用面の課題として、従業員による活用が進まないことが上位に挙がっていると報告されています(全社的に導入している企業で特に高い傾向です)[4]。
ご相談でも、アカウントを配っただけで、使う業務が決まっていない、という状態が目立ちます。
理由2:目標と、経営からのメッセージがない
何をどれだけ変えたいかという目標がないと、現場は「とりあえず触ってみる」で終わります。経営層がAIの使い方や期待を自分の言葉で話していない会社ほど、この傾向が強くなります。
白書では、中小企業が生成AIの活用で実施している取組のうち、「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」が最も高い回答割合(32.9%)でした[2]。白書は、中小企業におけるAI活用については、トップダウンの関与がキーポイントとなっていることがうかがえる、としています[2]。
ご相談のなかにも、「経営層がAIを理解していない。安全性や効果を、まず経営層に説明したい」という声があります。
理由3:使ってよい範囲が分からず、怖くて使えない
何を入れてよいか決まっていないと、社員は「うっかり情報を漏らすかもしれない」と不安になり、使うのをためらいます。
白書でも、日本の企業が生成AIの活用で懸念するリスクで最も多いのは「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある」で46.4%、次いで「出力結果の精度に問題がある」が35.3%でした[5]。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編]」は、職場がAIサービスを用意していないと、従業員が個人で使うAI(シャドーAI)を業務に使うことがあると指摘しています[6]。禁止したり放置したりするのではなく、会社で使えるAIと、入力してよい情報の範囲を示すことが、定着の前提になります。使ってよい範囲を決めるルールの作り方は、生成AIの社内利用ガイドラインの作り方で解説しています。身近なExcel作業で、個人のAIに社内の表を入れずに済む使い方は、ExcelでAIを使う方法で紹介しています。
ご相談のなかには、社員が会社の管理の外で、個人でAIを使っているというものもいくつかありました。「社員が無料版のAIを個人で使い、仕事のデータを入れている。会社として把握できていない」という声です。
理由4:研修が「使い方の説明」で終わっている
研修が、一般的な操作の説明を一度やって終わりになっていると、各自の業務での使い方までは身につきません。研修そのものが悪いわけではありません。使う業務と目標が決まってから行うほうが、研修は効きます。
ご相談のなかには、文章作成や調べものなど基礎的な使い方はできているが、実務には広がらない、というものが24件中3件ありました。「以前、動画の研修(eラーニング)を用意したが、ほとんど見られなかった」という声もありました。
理由5:聞ける人と、続ける仕組みがない
迷ったときに聞ける人がいないと、最初のつまずきで離れてしまいます。使える人と使えない人の差が開いたままだと、差はさらに広がります。
中小企業基盤整備機構の調査でも、AI・ITの導入を推進する専任の担当者がいる中小企業は少なく、多くは経営者や現場が個別に進めていると報告されています。同じ調査の自由回答では、「利用者のスキルによるばらつき」が課題として挙がっています[4]。
ご相談でも、社員間で使い方に差がある(ばらつき・二極化)ことが記録されていたものが24件中7件、約3割ありました。「使える人と使えない人に二極化している。内容を分けて教えてほしい」という声もありました。
どの理由に当てはまるかが見えたら、次は順番を組み直します。
理由1・2に当てはまったら、まず使う業務を決めるところからです。23問・約5分の無料AI活用診断で、AIを最初に試す業務の候補が分かります。結果の表示には、かんたんな登録(4項目)があります。
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研修の前に「業務」と「目標」を決める
よくある順番と、定着しやすい順番
多くの会社は、ツールを入れてから全員に研修をし、あとで「業務は何か変わったか」を確かめます。この順番だと、研修で操作を覚えても、使う場面がないまま終わりがちです。定着しやすいのは、逆の順番です。まず、現場の手間がかかっている業務と、経営として減らしたい数字(時間や件数など)を決めます。次に、その業務に合う使い方を決め、必要な人に必要な研修をします。研修だけでは仕事の流れは変わらない、と当サイトは考えています。

業務の決め方は記事01で
どの業務から試すかの選び方は、AI導入は何から始める?でくわしく紹介しています。業務を書き出して整理するときは、業務棚卸しシートが使えます。全社一斉ではなく、まず1〜3つに絞るのがコツです。
経営層への説明
試す業務と目標について社内の承認を取るときは、社内提案書ひな形を使うと、決めてほしいことを整理しやすくなります。
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定着させる立て直しの5ステップ
ここからは、立て直しの具体的な5つのステップです。上から順に進め、ステップ5まで来たら、ステップ2に戻って次の業務へ広げます。

ステップ1:今の使われ方を確かめる
まず、誰が、どの業務で、どのくらいAIを使っているかを確かめます。責めるためではなく、把握して支援するための確認だと先に伝えると、正直な答えが集まります。匿名の簡単なアンケートでかまいません。会社で契約したAIの利用状況が管理画面で分かる場合は、それも見ます。会社の外のAIを個人で使っている人がいないかも、あわせて聞いておきます。つまずきやすいのは、使っている人の数だけを数えて満足してしまうことです。数よりも、どの業務で使われているかを見ます。
ステップ2:試す業務を1〜3つに絞り、目標を決める
全社一斉ではなく、手間が大きく、繰り返しが多い業務から始めます。選び方は、記事のAI導入は何から始める?の考え方が使えます。目標は「使った人の数」ではなく、「その業務の時間・件数・やり直しの回数」などで置くことを、当サイトはおすすめします。決めた業務と目標は、経営層から社内に伝えてもらいます。トップダウンの関与が効くことは、理由2で見たとおりです。つまずきやすいのは、業務を欲張って増やしすぎることです。まずは1つでかまいません。
ステップ3:使ってよい範囲と、使い方の型をそろえる
どの情報を入れてよいかの線引きは、1枚にまとめれば十分です。作り方は生成AIの社内利用ガイドラインの作り方で解説しています(判定表や条文までは、この記事では扱いません)。あわせて、業務ごとに「入力→指示文(プロンプト)→出てきたものを人が確かめる所」を、1枚の型にします。たとえば、問い合わせメールの下書きをAIに作らせ、担当者が事実と語調を確かめてから送る、という流れです(架空の例です)。Excelの集計や転記のような身近な業務から型を作るのもおすすめです。ExcelでのAIの具体的な使い方は、ExcelでAIを使う方法でまとめています。つまずきやすいのは、完璧な型を作ろうとして動き出せないことです。短い型から始めます。
ステップ4:その業務に合わせて、現場で一緒に練習する
研修は、ここで行います。一般的な操作の説明ではなく、ステップ2で決めた業務を、実際の(入れてよい)資料を使って手を動かして練習します。使える人とこれからの人で差があるときは、内容を分けます。使える人には業務の型づくりや共有の役を、これからの人には決めた業務での基本の練習を割り当てます。社員の習熟度を見える化するときは、AI活用スキルチェックリストが使えます。
自社の業務を聞いたうえでAIを入れる場所を決める研修をお探しなら、47都道府県AI研修もあります。対象は会社のみで、選考があり、撮影と公開への協力が条件です。
つまずきやすいのは、研修を一度きりで終わらせることです。練習したあとに、現場で使い続ける仕組みが要ります。
ステップ5:推進役と相談先を決め、月1回振り返る
最後に、推進役(兼務でかまいません)と、迷ったときに聞ける相談先を決めます。そして、月に1回、ステップ2で決めた目標で振り返ります(頻度は当サイトの提案です)。うまくいった型は、短い社内勉強会などで、ほかの部署へ広げます。つまずきやすいのは、担当者ひとりに任せきりにすることです。経営の目標と相談先がないと、続きません。
使ってよい範囲が分からないと、AIは使われにくくなります。12問・約2分の無料セキュリティ診断で、社内の守りとAIの使い方を確認できます。結果の受け取りには会社名と会社のメールアドレスが必要です。
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定着したかを確かめる3つの目安
定着したかどうかは、次の3つで確かめます。これは公的に決まった基準ではなく、当サイトの提案です。数字の目標値は、自社で始める前の状態を測ってから決めます。
- 決めた業務で、AIを使う手順が毎回使われているか
- 決めた業務の時間・件数・やり直しが、始める前と比べてどう変わったか
- 現場から「次はこの業務にも使いたい」という声が出ているか
「使っている人の割合」だけを目安にしないのは、使っていても個人の作業で止まり、業務の流れが変わらないことがあるからです。
ご相談でも、「文章づくりや調べものには使っているが、資料作成やチェック作業など実務には広がっていない」という声があります。人数だけでは、この状態は見えません。
06
立て直しでよくある失敗と避け方
最後に、立て直しのときにつまずきやすい点と、避け方をまとめます。
- 別のAIに乗り換える。使う業務が決まっていないと、どのAIに替えても同じことが起きます。先に業務と目標を決めます。
- 全員にもう一度、同じ研修をする。使える人には退屈で、これからの人には難しくなります。業務と習熟度で内容を分けます。
- 全面禁止にする、または放置する。会社が把握できない使い方が増えます[6]。会社で使えるAIと範囲を示すほうが安全です(くわしくは生成AIの社内利用ガイドラインの作り方)。
- 担当者ひとりに任せる。経営からの目標と相談先がないと続きません。推進役と窓口を決めます。
- 効果を急いで数字で約束する。試す業務を絞り、始める前の時間を測ってから比べます。
社員が個人でAIを使う「シャドーAI」への詳しい対策は、別の記事で扱う予定です。
07
よくある質問
生成AIが社内で定着しない一番の理由は何ですか?
多いのは、何の業務に使うかと、何を目標にするかが決まらないまま、アカウントの配布や研修が先に進んでいることです。使う業務を1〜3つに絞り、目標を決めてから、その業務に合わせて練習すると、定着しやすくなります。
他の会社でも、生成AIは定着していないのですか?
総務省の情報通信白書(令和8年版)では、日本の企業の86.4%が何らかの業務で生成AIを使っている一方[1]、中小企業の45.6%が、生成AIによる業務変革などの組織的な取組は「ない」と回答しています[2]。使い始めた後に、組織として広げる段階で止まる会社は少なくありません。
研修をやり直せば定着しますか?
研修だけでは、仕事の流れは変わりにくいです。先に試す業務と目標を決め、その業務を実際の資料で練習する形にすると、研修が仕事に結びつきやすくなります。
使える人と使えない人の差が開いています。どうすればいいですか?
同じ研修を全員に繰り返すより、使える人には業務の型づくりや共有の役を、これからの人には決めた業務での基本の練習を、と内容を分けます。うまく使えている人の型を社内で共有する場をつくるのも効果的です。
定着したかどうかは、何で判断すればいいですか?
使っている人の数だけでなく、決めた業務でAIを使う手順が毎回使われているか、その業務の時間や件数が始める前と比べてどう変わったかで確かめます。目安は公的に決まったものではないため、自社で始める前の状態を測っておきます。
社員が会社の外のAIを個人で使っています。禁止すべきですか?
禁止だけでは、会社が把握できない使い方が残ることがあります。IPAは、職場がAIサービスを用意していないと、従業員が個人で使うAIを業務に使うことがあるとしています[6]。会社で使えるAIと、入力してよい情報の範囲を決めて示すことが先です。
経営者は何をすればいいですか?
試す業務と目標を決め、社内に伝えることです。総務省の白書は、中小企業のAI活用ではトップダウンの関与がキーポイントになっていることがうかがえるとしています[2]。
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まとめ
生成AIを社内に定着させる立て直しは、次の5ステップで進めます。
- 今の使われ方を確かめる
- 試す業務を1〜3つに絞り、目標を決める
- 使ってよい範囲と、使い方の型をそろえる
- その業務に合わせて、現場で一緒に練習する
- 推進役と相談先を決め、月1回振り返る
今日やることは1つです。この記事の表で、自社に当てはまる理由にチェックを付け、対応するステップを1つ決めてください。
どの業務から立て直すか決めきれないときは、無料の個別相談をご利用ください。ご相談内容をもとに、月ごとの進め方をまとめた御社専用のAI導入ロードマップをお作りします。お申込みは2ステップです。